左の写真は、御船町にあるおよそ9000万年前に堆積した地層である「御船層群」のうち、「上部層」と名前のついた地層からとってきた石です。それぞれ石の色がちがうことに気がついたでしょうか。一方が黒っぽい色、もう一方が赤茶色にみえますね。黒っぽい色をした石は上部層にふくまれる「灰緑色泥岩層(かいりょくしょくでいがんそう)」から、赤茶色にみえる石は「赤色泥岩層(せきしょくでいがんそう)」からとってきました。泥岩層という名前のとおり、両方とも「泥」が固まってできた泥岩です。なぜ色がちがうのでしょうか?
ヒントは、石に含まれている「鉄」です。「鉄」というキーワードをもとに、石とは別のものに着目してみましょう。下の写真は化石の発掘につかうハンマーです。持つところ以外は鉄でできています。ハンマーの頭の部分は赤茶色をしていますね。シールを保護していたテープをはがしてみると、一部銀色のところが見えました。ハンマーが新品のときには持つところ以外は全て銀色だったのが、使っていくうちに赤茶色に変わっていったのです。このように、金属の表面の色が変わったりざらざらしたりすることを「錆(さび)が発生する」「錆(さ)びる」といいます。この錆は、金属と酸素が反応して発生します。
さて、最初の写真にあった石の色が違う理由のひとつは、ハンマーの鉄が赤茶色になったのと同じように、石にふくまれている鉄が酸素と反応してこのような色になったからです。一方、黒っぽい色をした石はよくみると青みがかった色をしています。この色も鉄が原因のひとつ。鉄と酸素の反応の仕方のちがいによって、鉄の色が赤茶色になったり青みがかったりと色が変わる、つまり石の色も変わるのです。鉄と酸素がどのように反応するかは、石のもとになった泥がたまったときの環境や、たまった後の環境に依存します。当時の環境が乾燥していたのか、あるいは湿度が高く湿った環境だったかの違いによって、できる石の色が変わってくるのです。なにげなくみている石の色から、大昔の環境を推測することができるというわけですね。
※なお、石の色はすべてが鉄の状態で決まるわけではありません。鉄以外の成分も石の色に関係してきます。
文・写真 富澤由規子