「地質の日」WEB企画 2021 「恐竜を見つけに行こう!」

5月10日は地質の日

私たちが生活している土地は、様々な地層や岩石でできています。この土地のつくり(状態や種類など)のことを「地質」といいます。「地質の日」は、平成19年3月に、 地質関係の組織や学会が発起人となって定められました。
熊本県内では、「地質の日」くまもと実行委員会(代表:長谷義隆 御所浦白亜紀資料館長)によって、展示や体験教室など、様々な取り組みが行われてきました。

今年度は、熊本の地質に関する動画や塗り絵など、おうちで楽しめるwebコンテンツを公開しています。

阿蘇火山博物館:阿蘇ジオパークと阿蘇火山博物館(動画)

御所浦白亜紀資料館:むかしのいきものぬりえ

熊本博物館:金峰山の上(西側)からみた熊本市周辺の火山

肥後の水とみどりの愛護基金:動画「水はみんなの命」5分バージョン(インスタグラム)

熊本県博物館ネットワークセンター:「地質の日」web企画in熊本県博物館ネットワーク 

なぜ5月10日?

地図の上に岩石や地層の種類を塗り分けたものを地質図といいます。地質図は、建物や道路の整備、防災を考える時に活用されています。また、化石の調査や保護にも役立てられています。
明治9年5月10日に日本で初めて広域的な地質図が作成されました。また、2年後の明治11年5月10日には、国内で初めて地質調査を扱う組織が定められたとのこと。このように、5月10日は日本の「地質」にとって、特別な日なのですね。

地質図

インターネットで全国の地質図を見ることができます。

地質図表示システム 地質図Navi

凡例表示をクリックして調べたい場所にカーソルを合わせると、年代や岩石の種類が表示されます。お家の周りの地質を調べてみましょう。そこは恐竜化石が眠っている場所かも!

県の石

日本地質学会は、全国の「県の石」を選定し、2016年の地質の日に公表しました(全国の「県の石」はコチラ)。「石」といってもいろいろな状態のものがありますから、「県の石」も「岩石」、「鉱物」、「化石」の3つの部門からそれぞれ選ばれています。

熊本県の岩石は溶結凝灰岩、鉱物は鱗珪石、化石は白亜紀恐竜化石群です(御船町恐竜博物館ブログ「熊本県の石」もご覧ださい)。

さて、今日の話題はその化石「白亜紀恐竜化石群」。熊本県にはたくさんの白亜紀の恐竜化石産地があります。発見が公表された順に市町村名を紹介すると、御船町、益城町、天草市、八代市。地層はこの市町に限らず広く分布していますから、ほかの地域でも見つかるかもしれません。

天草市の恐竜化石は天草市立御所浦白亜紀資料館で詳しく紹介されていますので、ここでは、八代市と御船町の化石を紹介します。

八代市の恐竜化石

平成26年に、熊本県八代市に分布する白亜紀前期の地層(川口層、約1億3300万年前)から恐竜のものとみられる化石が発見されました。この化石は熊本県の恐竜化石としては最も古い年代の恐竜化石であり、国内でも足跡を除く体化石としては最古級の恐竜化石です。

八代地域の川口層から発見された恐竜の肋骨と見られる化石。
どのようにして発見されたの?

平成26年10月29日、村上浩二さんが八代市坂本町に分布する白亜紀前期の地層を調査中に、斜面に崩れていた転石の中から発見しました。村上さんは、長年この地域の地層の重なりとアンモナイトや二枚貝化石の収集と研究を行っていました。化石が見つかった場所の周りを調査しましたが、残念ながら他の化石は見つかりませんでした。その後、御船町恐竜博物館の古閑公浩資料技師が剖出作業を行いました。

採集当時の化石。岩石の表面に骨化石の断面が見えている。
この化石にはどんな意味があるの?

この化石が見つかるまでは、熊本県内で恐竜化石が見つかる地層といえば、御船や天草地域に分布する白亜紀中頃以降の地層だけでした。八代地域には御船や天草より古い白亜紀古世(前期)の地層が広く分布しているので、新たに古い時代の恐竜化石が見つかり始めたということになります。今のところ、見つかっている恐竜化石はひとつだけですが、今回の発見で化石を含んでいる地層のことがわかり、新しい化石を探しやすくなったことは、大きな前進です。

国内では、福井県、兵庫県、福岡県などで白亜紀古世(前期)の恐竜化石が見つかっていますので、同じ時代に同じ恐竜が住んでいたことがわかれば、当時の陸地のつながりがわかってくるかもしれません。

当時の環境の変化や生物の進化を解明するためには、いろいろな年代や地域の化石が必要です。

御船町の恐竜化石

昭和54年、御船町上梅木で日本初の肉食恐竜化石(ミフネリュウ)が見つかり、昭和59年に学会で公表されました。平成2年には、御船町田代(天君ダム下流)で、恐竜化石がまとまって見つかり、発掘調査が始まりました。その結果、たくさんの恐竜化石が見つかるようになり、現在も化石の収集が行われています。

御船町田代天君ダムの恐竜化石発掘現場

ミフネリュウの歯の化石が見つかったのは、御船層群下部層。浅い海でできた地層です。歯の歯根が溶けてなくなっている状況から、抜け落ちた歯が海に流されて化石になったものだと考えられています。

一方、主に恐竜化石が見つかるのは御船層群の上部層。上部層は、陸上の河川の働きでできた地層です。恐竜の骨や歯が流れる水によって運ばれてきた泥や砂の中に埋もれていきました。抜け落ちた歯だけでなく、ばらばらになった恐竜の骨格も一緒に埋もれています。そして、水辺の環境を示す地層では、恐竜の足跡化石も見つかっています。

どのようにして発見されたの?

日本初の肉食恐竜化石「ミフネリュウ」の発見は、小学1年生によるもの。夏休みの自由研究のために貝化石を採集していて、発見されたものです。天君ダム下流での恐竜化石の発見は、卒業研究の野外調査をしていた大学生によるもの。この大学生も貝化石を調べていた時に、偶然、骨の化石を見つけました。今は、「恐竜の化石を見つけに行こう!」といって、見つけることもできるようになってきましたが、当時は、他の化石を採集していて偶然見つかるということがほとんどでした。

1990年に御船町田代(天君ダム下流)で最初に発見された恐竜化石
御船層群の恐竜化石にはどのような意味があるの?

御船層群は、今から約9000万年前に堆積した地層。世界的に見てもこの時代の恐竜化石は少ないと言われています。御船層群でも、詳しい種類がわかっているものは多くないのですが、ティラノサウルス類、オルニトミムス竜類、テリジノサウルス類、ドロマエオサウルス類、ハドロサウルス類、鎧竜類など、少なくとも6種類(おそらく7種類)の恐竜がいたことがわかっています。たくさんの種類が見つかっているので、その当時、東アジアの海岸付近にどんななかまの恐竜が生息していたのかを知ることができます。

また、白亜紀の中で、古い時代の恐竜から新しい時代の恐竜に移り変わる時代。恐竜の進化だけでなくアジアと北アメリカの恐竜の分布や移動のタイミングなどを読み解く手がかりになります。

テリジノサウルス類の復元画

恐竜博物館のコレクション

御船層群のように、恐竜の骨格がばらばらになって見つかることもあり、化石をひとつひとつ集めるのはとても時間のかかることです。

地域にある博物館は、放置すると失われてしまう地域の資料を収集し、未来に伝える役割を果たしています。また、展示や学習に役立つように関連する資料も収集し、いつでも利用できるように整理しています。

収蔵庫の様子。熊本地震の時は、可動棚が全壊したが、中の資料は無事だった。

御船層群の恐竜化石の主なコレクションは、御船町恐竜博物館に収蔵されています。世界中探しても、これと同じコレクションはありません。また、中生代の貝化石の貴重なコレクションも所蔵しています。

野田雅之博士が北海道で採集したイノセラムスやアンモナイトの化石。採集された当時の状態で御船町恐竜博物館に寄贈され、博物館でクリーニング作業が行われた。

御船町恐竜博物館では、企画展として「恐竜博物館のコレクション展」を開催しました。新型コロナウイルス感染対策のため、4月24日から臨時休館となってしまいましたが、展示の様子を動画でご覧いただくことができます↓

地震や水害など、いつ災害に見舞われるかわからない世の中。博物館はこれらの大切な資料を確実に未来へ手渡さなければなりません。責任重大・・・ですね。

恐竜を見つけに行こう!・・・ですが・・。

熊本で恐竜を見つけるにはどこに行ったらよいか?おわかりいただけたでしょうか?

しかし!、、「見つけにいこう!」と紹介しておきながら、たいへん申し訳ないのですが、焦ってはいけません。

まず、地質図を見たり、博物館のウェブサイトを見たりして調べてみましょう。化石を見つけるときには「地質」が大切です。新型コロナウイルスの流行が収まったら、博物館にも行ってみましょう。

恐竜化石は県内の博物館に展示されていますし、それに、みなさんの身のまわりにもたくさん飛んでますよね(ん?、何のこと?と思った人は下の動画をチェック!)。まずは、そんな恐竜から見つけてみましょう!

化石は大変貴重なものです。正しい採集方法を知らずに掘ると、壊れてしまいます。それに、地層を掘るときには必ず許可をもらわなければなりません。

また、野外には様々な危険が隠れています。春から秋にかけてはハチやヘビにも注意が必要です。夏は熱中症に注意です。それに、崖や海岸など危険な場所もあります。出かける時は準備をしっかりして、おとなの人と一緒に行くようにしましょう。

緊急予告!

御船町恐竜博物館では、新たな恐竜化石産地発見を目指して野外調査を継続中。近いうちに「調査隊」が現地からレポートします(?)。乞うご期待!

文・写真:池上直樹

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