前回の記事「〜恐竜から鳥への進化〜 キーワードその1:サコツ」の続きです。
長い間受け入れられなかったけれど、今では多くの人が支持している『鳥は恐竜から進化した』という学説。しかしながら、2000年代に入ってもある問題が残されていました。
それは、「指の種類」。
いまのところ、獣脚類の一部(ドロマエオサウルス類、あるいはそれに近い獣脚類)が鳥へ進化したと考えられています。では、鳥に近い恐竜の前あしを見てみましょう(図1)。ドロマエオサウルス類の前あしは、指が3本あります。原始的な獣脚類では前あしの指が5本でしたが、進化の過程でくすり指と小指が小さく退化し、最終的におや指(図1-①)・ひとさし指(図1-②)・なか指(図1-③)の3本が残ったと考えられています。
一方、鳥類の前あしの指も3本あります(図2、赤色部分)。鳥に近い恐竜と指の数は同じなのですが、卵の中でヒナが育つ過程を研究した結果から※、①は人差し指、②は中指、③はくすり指と、考えられていま“した”。3本指の恐竜の前あしは「おや指・ひとさし指・なか指」なのに、鳥の前あしは「人差し指・なか指・くすり指」ということです(図3)。
恐竜から鳥へ進化したのなら、指の種類は同じであるのが自然です。“恐竜のときに退化した「くすり指を復活」させて、「おや指を退化」させる”という進化が起きたとは、考えにくいためです。鳥と恐竜に多くの共通点が発見された一方で、「指の種類」の問題は残されたままでした。
しかし2011年、日本の研究者がこの問題を解決しました。東北大学大学院生命科学研究科の田村宏治教授と大学院生の野村直生さん(当時)らが、卵の中でヒナが育つ過程を詳しく追跡し、鳥の前あしの指も恐竜と同じ「おや指・ひとさし指・なか指」であることを証明したのです!この研究成果は、非常に有名な科学雑誌「Science」に掲載されました。
くわしく知りたい方はこちら:東北大学2011年プレスリリース:恐竜の前足の指と鳥類の翼の指は同じもの-150年続く指論争に終止符を打つ発生研究-
1868年に鳥と恐竜の共通点が指摘されてから約150年。さまざまな発見と、議論・研究によって、恐竜から鳥への進化に関する多くの謎が解き明かされてきました。
一方で、恐竜はもちろんのこと、恐竜以外の古生物や過去の地球についてまだ明らかになっていないこと/わたしたちが知らないことは、もの凄くたくさんあるでしょう。これからどんなことが明らかになるのか、ワクワクしますね!
※個体発生(受精卵から成体になるまで)を研究する生物学の分野を、発生生物学とよびます。
(文・写真・イラスト 富澤由規子)
(イラストの一部は、イラストACのイラストを一部改変しています)
ありがとうございます!たまたまfurculaという言葉を調べていてここに辿り着きました。イラストがものすごく分かりやすくて頭にスッと入ってきました。
家で飼っていた白ボタンインコは人懐っこい反面、気が強いところもあり、なんか恐竜っぽいなと
いつも思っていました。
空を飛んでいるカラスや鳩も恐竜の子孫だと思うと太古のロマンを感じます。
知りたかったことがまとまっていて分かりやすかったです!展示も見に行きたい!遠いのでなかなか難しいですが必ず遊びに行きます!