『鳥は恐竜から進化した。』
今では多くの人が支持している学説ですが、実は長いあいだ受け入れられていなかったのです-…
鳥と恐竜の共通点が最初に指摘されたのは、1868年のこと。イギリスの生物学者であるトマス・ヘンリー・ハクスリー氏によって、論文「On the Animals which are most nearly intermediate between Birds and Reptiles.」が発表されました。しかし、多くの人はこの説に反論をしました。
「鳥と恐竜の共通点はそれぞれが独自に進化したもので、たまたま一致したにちがいない※1。」
「恐竜には、“鎖骨”がない。」
「鳥類の指と恐竜の指は一見似ているけれど、“指の種類”が違う。」
今回の記事では、2つ目に記載した反論『恐竜には、“鎖骨”がない。』に注目します。
叉骨とは胸元にあるU(V)字型の骨で、左右1本ずつの鎖骨がつながって1本になった骨です(図1)。羽ばたきと一緒にバネのように動く、鳥類に特徴的な骨だと考えられていました。上に書いた反論は、「鳥は恐竜から進化したのなら、鎖骨が恐竜にないのはおかしいだろう」という主張です。この反論がされた当時は、恐竜から鎖骨が発見されていなかったのです。
しかしその後、アメリカの古生物学者であるジョン・H・オストロム氏によって、恐竜と鳥類に共通する特徴が20カ所以上あることと、過去に発見された恐竜化石に鎖骨が確認されること、そもそも鎖骨は化石として残りにくいことが指摘されました。この時1973年。鳥と恐竜の共通点が最初に指摘された1868年から105年後のことでした。
1986年には、イエール大学(アメリカ)のジャック・ゴーティエ教授(現在)が鳥類と恐竜に見られる84個の特徴を用いて、鳥類が竜盤類に分類されることを示しました※2。さらに、羽毛の痕跡が残された恐竜化石や、行動における共通点(抱卵や休息姿勢)も発見され、現在では『鳥は恐竜から進化した』ことを多くの人が支持するようになったのです。
しかし!2000年代に入っても、残された問題がありました。それは…
「 指 の 種 類 」
次回は、3つ目に記載した反論『鳥類の指と恐竜の指は一見似ているけれど、“指の種類”が違う。』に注目します。
ちなみに現在では、恐竜に叉骨があったこともわかっています。御船町恐竜博物館の常設展示には恐竜の全身骨格が19体並んでいますが、そのうち3体には叉骨がついています(図2)※3。博物館で恐竜の全身骨格を観察する機会があったら、ぜひ叉骨を探してみてくださいね。
※1:系統が異なる生き物なのに、生息する環境が同じことで似たような形に進化することを、「収斂進化(しゅうれんしんか)」といいます。身近な例では、イルカ(ほ乳類)・サメ(軟骨魚類)・魚竜(絶滅した海棲は虫類)の形が似ていることなどが挙げられます。
※2:この研究では、世界で初めて分岐学に基づいて恐竜と鳥類の系統関係が調べられ、恐竜はひとつの祖先から進化したグループであること、そして、その系統に鳥類が含まれることが示されました。鳥類がマニラプトル類の一員であることが、他の恐竜とは共通しない17個の特徴(共有派生形質)で支持されたのです。
※3:叉骨が発見される前に標本が組み立てられた恐竜の場合、叉骨が発見されていても、叉骨が付けられていないことがあります。
(文・写真:富澤由規子)
(人体骨格:イラストACより(一部加工))
鳥と恐竜は同じとゆうことがわかった。