2016年6月、ロッキー博物館のパトリック・リージー氏が、御船町恐竜博物館との共同プロジェクトである「プレパレーション・プロジェクト」を指導するために来日されました。そこで、リージー氏に同プロジェクトや博物館の役目についてお話をうかがい、古生物学者になりたい子供たちへのアドバイスもいただきました。
キャプレール:リージー先生,おはようございます。御船町恐竜博物館のブログの読者たちに自己紹介をお願いします。
リージー氏:パトリックと申します。アメリカ合衆国モンタナ州ボーズマン市にあるモンタナ州立大学ロッキー博物館で古生物学部部長及び展示部部長として勤めています。
キャプレール:御船町恐竜博物館と共同プロジェクトを始めた経緯を教えてください
リージー氏:5年前、池上先生がロッキー博物館に訪ねて来て、「プレパレーション・プロジェクト」とういう企画を提案しました。池上先生は、御船町恐竜博物館でモンタナ産の恐竜の化石のクリーニングを通してスタッフを訓練することを希望したのです。これまでに、第二次プレパレーション・プロジェクトが終わり、今年より第三次プロジェクトを始めたところです。
プレパレーション ・ プロジェクトとは?
御船町恐竜博物館とロッキー博物館の間で2012年に開始された学術的な(古生物学に基づく)協力プログラムです。野外から発掘された恐竜の骨はまずはロッキー博物館に送られ、その後に御船町恐竜博物館でクリーニングされ、再びロッキー博物館に戻されます。
第一次プロジェクトの時には,竜脚類の首(頸椎)が入ったフィールドジャケットを送ったのですが、クリーニング作業の途中でとても珍しい頭蓋骨が出て来ました。御船町恐竜博物館の1階の「モンタナ展示ケース」で、その頸椎と頭蓋骨のレプリカを観ることができます。第二次プロジェ クトの
目標は、さらに難しい化石のクリーニングを御船恐竜博物館のプリパレーターに訓練させることでした。以前にクリーニングした骨の基質や岩と比べたら、第二次プロジェクトのものはもっと固い特徴があります。お互いに重なった骨を石から取り出すのは難しくて、とても大変な作業でした。結果として、御船に送った石から合計150個の骨を取り出しました。このジャケットの中には頭蓋骨のパーツがいっぱい入っていて、現在、モンタナ州立大学のデイビッド・ヴァリッキオ教授が研究しています。研究価値の高い標本が多く出たので、第一次・二次プロジェクトは非常に有意義だったといえるでしょう。
キャプレール:リージー先生は、御船町恐竜博物館やロッキー博物館のような自然史博物館にはどのような役目があると考えますか?
リージー氏:博物館とは、学校では習わない、あるいはさらに学びたい人
が学習できる、生涯学習を経験できるとても素晴らしい所です。老若男女を問わず誰もが参加が出来ます。博物館は、学校の授業とは異なる学びの場所を提供し、自分のペースで学ぶことができます。御船町恐竜博物館は研究をベースに活動しているので、来館者はいつも新しい情報を探すことができ、とてもエキサイティングです。例えば、池上先生は恐竜の研究をとおして新しい発見をしています。
キャプレール:古生物学者を夢見る子供たちにアドバイスをください
リージー氏:若いときから何でも読み、何でも勉強して、外に出
て色々と探求し、大人になっても冒険者の心を持ち続けて下さい。子供たちが学者や古生物学者になりたいのならば、数学や地質学、生物学などをよく勉強して自分の基礎をもちましょう。そのため、勉強を早く始めて、博物館に通って古生物学者に会っていっぱい質問をするといいですね。それはとてもよい勉強になるでしょう。変な質問をしてもいいのですから、けっして怖がらないでください。科学者だってそうしていますからね。
キャプレール:どうもありがとうございました。
文と写真・キャプレール ・ダヴィッド(御船町恐竜博物館学習指導員)
リージー氏の写真 山下雄大