メガロドンの教材化
|
|
〈ねらい〉
熊本県球磨村球泉洞付近の地層は、四国の三宝山付近の岩石や化石と同様のものを産出することから、三宝山帯に属すと考えられている。この地帯では、石灰岩やチャートなどの堆積岩、玄武岩や凝灰岩などの火山噴出物などが観察できる。特に、石灰岩には大型の二枚貝メガロドンの化石が含まれており、メガロドンやその他の化石から当時の環境を推定したりプレートの運動と関連した大地の変化を考察したりする学習に適している。 |
|
|
〈使い方〉
1.球泉洞下の球磨川槍倒しの瀬の河原での、大型の二枚貝化石メガロドンを含む石灰岩の観察
2. 岩石や産出する化石から大昔の環境や時代を推定
3.堆積時の地理を推定し、現在の位置との比較による大地の変化の考察(プレートテクトニクスの考え方) |
|
|
|
|
上の写真は、球泉洞側から撮影した球磨川槍倒しの瀬。この河原から、メガロドンを含む石灰岩(写真下)が観察できる。この場所へは、高速道人吉インターより国道219号線を八代方面へ車で30分。肥薩線球泉洞駅より徒歩10分。 |
|
|
|
メガロドンとは・・・
「メガロドン」と聞くと、恐竜やサメのなかまを思い浮かべてしまいそうですが、実は中生代三畳紀後期(約2億年前)に巨大化した二枚貝のなかまです。大きさは数cm〜数十cm、大きい「歯」をもち、殻が厚いのが特徴です。メガロドンの「メガロ」は「大きい」、「ドン」は「歯」という意味です。
左下の写真は石灰岩中のメガロドンの化石で、貝殻の断面が白く見えています。右下の写真は石灰岩から削り出されたものです〈熊本大学教育学部所蔵〉。 |
|
|
|
石灰岩中のメガロドン
|
削り出されたメガロドン化石
(熊本大学教育学部所蔵)
|
|
|
|
|
周辺の地層からの大昔の環境を推定する
槍倒しの瀬の北側(球磨村小口付近)には、サンゴの化石が見られます。現生のサンゴは、暖かく(熱帯の)浅い海に生息しています。よってここで産出する化石サンゴが同様の環境で生息していたと考えると、メガロドンが生息してた場所は、暖かく(熱帯の)浅い海であったと考えることができます。また、枕状溶岩と呼ばれる枕を並べたような構造をした溶岩が見られます。このような構造は玄武岩が水中噴出したものに特徴的に見られます。ここで見られる枕状溶岩には表面に小さい気泡が見られることから、浅い海で噴出したものと考えられます。以上のことから、メガロドンは、周囲にサンゴ礁が発達した火山島上の浅いラグーンのような環境に生息していたと推定できます。
では、なぜ熱帯の海のものがここにあるのでしょうか?当時の地球では現在の日本付近まで熱帯地域が広がっていたのでしょうか?この地帯から発見される三畳紀後期の二枚貝化石の種類は南方のテチス海のものとの共通性が高く(テチスフォーナ)、すぐ北側の地帯から産出する同時代の二枚貝化石(河内ヶ谷フォーナ)とは全く種類が異なっています(田村、1992)。このことから、北側の地帯の河内ヶ谷フォーナを産出する地層は、現在の日本付近で形成されたもので、三宝山帯の石灰岩とそれに伴う火山岩類等は、南方の火山島でできた石灰岩がプレートにのってこの位置まで運ばれてきた(1年に数cmずつ動いて)ものだと考えることができます。さらに、この石灰岩の周辺には、ジュラ紀の放散虫化石を含む泥岩が挟まれていることから(田村、1994)、少なくともジュラ紀以降に、プレートの沈み込みに伴って陸側にはぎ取られるように付け加えられ(「付加(ふか)」といいます)、現在の位置まで押し上げられたと考えられます。 |
|
|
|
|
|
メガロドンの生息環境とプレートの動き |
|